【微笑む人 書評】他人のことなんて表面の1%しか知らない。いや知ろうとしない。

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スナです。

貫井徳郎氏の「微笑む人」を読んだので簡単に感想を書きます。

 

 

微笑む人/貫井徳郎 

 

エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が狭くなった」

常識では考えられない理由で妻子を殺害した。

 

なぜそんな理由で...?

誰からも信頼され、愛されていた仁藤俊実の裏の顔は「異常者」なのだろうか...

 

そんな理由で人を殺めたりするはずがない。

 

誰もが「きっと別の理由があってそれを明かしたくないから嘘をついている」

そう思っているのである。

ただの事件ではないと推測し、仁藤への捜査を進めていく。

すると過去に仁藤俊実の周辺で、

3件の不審死を遂げた人物がいるという事実が発覚する。

 

すべて仁藤俊実が関わっている(犯人)と睨む警察。

だが、その事件を追っていた警察にもある不幸が...

 

異常者であり知能犯の仁藤俊実。

事件の真相(殺害の動機)は何なのか?

それに期待して読んでもらいたい。

 

読み続けていく中でいろんな妄想が膨らむと思うが、

これだけは言える。

 

絶対にあなたの思い通りにはならない。

 

絶対に..だ。

 

※これから先はネタバレにも繋がるので読破した方に読んでもらいたい。

  

 

 

ミステリーの常識を超えた衝撃作!!

ミステリ作品の多くは初めに事件が発覚し、バラバラだったストーリーが

中盤になり少しずつ伏線を回収しながら読者も想像力を働かせ、

自分なりに最後の展開を推理していく。

終盤になれば犯人発覚。事件の真相も暴かれスッキリして終わるのが一般的である。

 

【微笑む人】では、犯人が捕まった所からストーリーが始まる。

あれ?最初に捕まった。ここで僕は違和感を覚える。

ここから先を予測するならば、

「犯人探しの時間」がメインでははなく、

「それ以外の何かを暴く時間」がメインとなるだろうと思った。

 

犯人(仁藤俊実)の異常性を感じる捜査関係者。

仁藤が異常者に育ってしまったキッカケが過去にあるのではないか?

大学-高校-小学校と遡っていくうちにバラバラだったストーリーがより細分化され混乱し、本書は幕を閉じた。

 

 

他人のことなんて表面の1%しか知らない

 

仁藤は決して人から恨まれる性格ではなかった。

何かあったら仁藤に相談しよう。

そう周りから思われるほどの人格者であった。

もちろん衝動的になる様なタイプでもない。

 

「仁藤(さん)は絶対に犯人じゃありません!!冤罪です!!」

会社の人間たち、中学・高校時代の友人たちも皆が口を揃えてそう言う。

 

 (私の何を知った気でいる...)

そう聞こえたのは僕だけか...

 

私たちは他人を理解しないまま、わかった振りをして生きている。

自分たちがわかった振りをしていることも忘れているのだ。

更に言うと、

人は自分が納得する様に簡単に記憶を書き換えてしまう。

 

いい人=殺人しない

 

 何を根拠にそう言う。

本書そして、「私に似た人」⬇︎

fistaction53.hatenablog.com

 

これらのキーワードとなる。

義憤

 きっかけが無いだけで、僕は殺人犯になる要素は誰にでもあると思う。

 

僕は家族が大好きだ。

そんな家族をどんな理由でも殺されたら可愛い顔をした僕も鬼になる。

犯人を殺めたい気持ちと衝動が起こる。

「殺人」という選択をした犯人が許せない。

きっかけがあったとしても皆さんには「殺人」という手段を選んでほしくないが。

 

だが本作では「家が狭くなった」という理由だけで「殺人」をしてしまう。

 

なぜその程度で...?

器が小さいのか...?

 

そう思っていると、ある映像が浮かび上がった。

実際に見ていただきたい。

 


東京・東村山市 赤ちゃんが埋められたような状態で置き去りに

 

赤ちゃんが何をしたのか?

殺す気だったのか?

 

 

・・・

・・・

・・・

皆さんは頭の中でこの赤ちゃんを置き去りにした

犯人が「母親」だと思ってないか?

 

まぁ保護責任者遺棄の時点で母親「も」犯人なのだが。

・・・

・・・

・・・

こういう事も考えられる。

妊娠してから夫婦仲が異常に悪くなった。

旦那は浮気をして別に女性の影がある。

自宅で出産することになったが、

母親は賛成、父親は出産を認めていなくて

産まれたときに父親が連れて置き去りにした可能性だってある。

母親は満足に動ける状態ではない。

変な推理をして申し訳ないが、このニュースを観て

「母親はどうしようもないやつ」

と思った人もいるだろう。

 

人は自分が納得するように簡単に話を作ってしまう。

簡単に!!簡単にしたいのだ。

 

 

ミステリーの常識を超えた作品と書いたが、

よく見るミステリー作品では自分がスッキリするような簡単な説明を

作者が書いてくれている。

それに納得してスッキリするのだろう。

 

でもそれは人間の良くない部分でもある。

物事をしっかりと考えない。

表しか見てない。見えない。

貫井氏はそんな想いを「微笑む人」にぶつけたのではないか?

こういうニュースを頻繁に見るだろう?

常識では理解できないような動機で殺人・犯罪が起こる様な、

今の日本社会とも照らし合わされている作品でもある。

 

 

いったい仁藤俊実は何者なのか?

3件の不審死の犯人も仁藤なのか?

別に本当の動機があるのか?

 

本を閉じたとき、読者、警察、仁藤俊実を知る人物、

正体を暴けなかった全ての人に対し

獄中から仁藤が微笑む姿を想像して寒気がした。

 

 

 

 

 

彼はいったい何者なのか...

 

彼??...あれ...僕...いつって言いました...?